アデリーペンギンの同調潜水行動
(3.6MB, 00:00:42)撮影日:1999/01/07
撮影場所:南極昭和基地周辺袋浦コロニー
佐藤克文
(Katsufumi Sato)
2003/09/10登録
種類:アデリーペンギン,
Pygoscelis adeliae
キーワード:南極 摂餌行動 集団
動物界 >脊索動物門 >鳥綱 >ペンギン目 >ペンギン科 >アデリーペンギン属 >
南極の海を覆っている定着氷に開いた穴より、集団で同調しつつ潜水行動を繰り返すアデリーペンギン。ペンギンが餌をとるための潜水を活発に行っているときに集団で同調して行動することを捉えたおそらく初めての映像である。集団には、胸に番号を書かれた潜水行動調査の対象個体も含まれている。ビデオのフォーマットはmovie、映像圧縮形式はH.263。より大きな画像をhttp://www.momo-p.com/showdetail.php?movieid=momo030724pa01bで見ることができます(ファイルサイズ37MB)。
以下がこの映像を用いた論文の要旨の日本語訳です。
アデリーペンギンの同調潜水行動
高橋晃周・佐藤克文・西川淳・綿貫豊・内藤靖彦
同種の他個体と行動を同調させることは、採食効率を上昇させる機能があると一般に考えられている。しかし、行動を同調させることが採食にコストをもたらす可能性についてはこれまでほとんど研究されてこなかった。アデリーペンギンは定着氷に囲まれた小さな開水面で潜水開始・終了を同調させることが知られている。我々は12ー47個体のペンギンの群れが同調して潜水を開始するのを観察し、そのうちの2個体(3組)と3個体(1組)について、潜水深度記録計を用いて1.7-4.5時間にわたり潜水行動を調査した。潜水開始・終了のタイミングは潜水行動を調べた個体間でわずかに異なり、ある個体が別の個体よりも常に早く潜水を開始する傾向がみられた。潜水時間の個体間の違いはわずかだったが、潜水中の最大深度は大きく異なり、4組のうちの2組において、片方の個体がもう片方の個体より常に深く潜水する傾向がみられた。潜水中の個体間の深度差は潜水中のフェーズによって異なった。沈降中・浮上中にくらべ、採食を活発に行っていると考えられるフェーズで深度差が大きく、集団中の個体が独立に餌を採っていることが示唆された。採食を活発に行っていると考えられるフェーズの長さは、集団の中で深くまで潜った個体において短く、潜水開始と終了を他個体に同調させることで採食時間が短くなるというコストがある可能性が示唆された。
Takahashi A, Sato K, Nishikawa J, Watanuki Y and Naito Y (2003)
Synchronous diving behavior of Adelie penguins. J Ethol (in press) DOI 10.1007/s10164-003-0111-1